夢をみた。
薄暗い山道を一歩一歩踏みしめ歩いていた。
何も憂えず、何も祈らず、ただ右と左のあしを交互に出し…
やがて道は石の階段になり、
ひとつひとつのぼってゆく。
途中階段を下る人とすれ違いひとことふたこと交わす。
「参拝でございましたか」
「わたしはこれから勤めに行くところです」
「ご苦労様です」
「ええ、ではごめんくださいませ」
「ごきげんよう」
絹のような霧の中に帰って行く人をしばし見つめ、また階段をのぼる。
薄暗いのは朝霧のせいだったのかと気づいたときには階段をのぼりきっていて、鳥居をくぐり境内へ向かうところであった。
わたしの大きくふくれた腹はもう臨月であろうか。
後ろを振り向けば霧が晴れて行く中、山々のむこうの海から朝日が顔をだしていた。
夢からさめると、わたしはどうやら身ごもっているのだと気づいた。
潮のお母さんの凪の君が潮を産む前の話。
途中ですれ違ったのは太陽